先祖の歩みと家業の原点
我が家の祖先は、源義経に仕え能登に身を隠した官吏に始まると伝えられています。江戸時代の寛政年間には、輪島市三井町細屋から町に出て素麺屋を開業し。「縄屋」の屋号を名乗りました。兄・助左衛門と弟・勘右衛門の素麺は評判を呼び、加賀藩御用達として金沢や江戸、京都にまで届けられました。やがて輪島に70軒余りあった素麺屋の元締めとして組合を率い、品質保持や職人の生活を守るために複数の掟書を制定。輪島素麺は「北陸の名物」と称されるほどに成長しました。
しかし幕末期、他地域との競合や技術流出により素麺業は衰退し、子孫は豆腐屋を経て輪島塗へと転じます。高祖父・彦左衛門が塗師となったことが、現在に続く輪島塗との縁の始まりでした。素麺業の衰退と輪島塗の興隆という産業転換の中で、我が家の先祖は地域に根差し、常に新しい道を切り拓いてきました。その歩みは、ものづくりを続ける私にとっても大きな誇りであり、挑戦を続ける原点となっています。


